-不倫の始末と法律- 奥さん(された側)が気をつけるべき点
2016/06/09
人はその人生においていろいろな場面で喜怒哀楽に直面するわけですが、その中でも特に「配偶者の不倫」という出来事は、「怒」と「哀」という感情がダブルパンチで襲い掛かってくるやっかいなトラブルだと思います。
わたしもこれまでに、祖父母や父親の死という大きな悲しみを経験しているのですが、それにも増してわたしの心を痛めつけたのは、旦那のW不倫という裏切り行為です。
人と人とのトラブルを避けるため、または解消するために、世の中には「法律」という秩序を守る手段があるわけですが、ご存知のとおり法律では人の感情まで抑えられません。
そういう意味で、感情というものは超法規的なものだとわたしは思います。
だからこそ多くの人は、夫や妻に裏切られたと知ったとき、法律なんて関係なく感情を爆発させたくなるんですよ。
実際、このブログには毎日たくさんの人が「夫に仕返し」「浮気相手に復讐」…みたいな検索で訪問してくださっています。訪問者ランキング一位の記事タイトルがそれに該当します。
そんなあなたのお気持ち、わたしには痛いほど分かりますよ。
ただ、本当にやっちゃうと自分の人生まで終わってしまう可能性もあるし、また仮に復讐を果たしたとしても抜け殻のようになってしまう危険性さえあります。
そこで今回は、不倫にまつわる人の感情とそれに関わりそうな法律について整理してみたいと思いますので、もしご自身にこれから関わりそうな法律があれば参考になさってください。
そもそも夫婦って法律で定義されているの?
お役所に婚姻届けを提出することによって法的に婚姻関係が成立します。そしてその状態を「夫婦」と呼ぶわけですが、それは「民法」という法律で定義されています。
夫婦になると法的にいろいろな制約を受けることになるわけですが、民法の第770条には浮気についての記述がありますので記載しておきますね。
民法 第770条
【1】夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
浮気に関する記述は(1)「不貞な行為」と(5)「婚姻を継続し難い重大な事由」が該当すると思いますが、もし旦那さんに不貞な行為があって、それによって奥さんが心身ともに大きなダメージを受けている場合には、奥さんは離婚の訴えを提起することができる…と書いてあります。
ただ、「不貞な行為」っていう部分が曖昧で分かりづらいんですよ。いったいどういう状況が「不貞な行為なの?」ってお話で、これは夫婦間で揉める大きな原因になっています。
おそらくあなたもそこで困っているでしょう?
浮気と不倫と不貞行為
「浮気」と「不倫」と「不貞行為」って似たような言葉があるわけですが、これらの言葉って結構曖昧な感じで使っていると思うんですよね。でも、調べてみると、それぞれにオリジナルな意味があるようです。
浮気とは
夫や妻、彼氏や彼女という関係がありながら、他の異性と関係を持ってしまうことです。では、この場合の「関係を持つ」というのは何を指すのかというと、実はこれが難しいところのようですね。人によっては手をつないで歩いていただけで「浮気だ!」と主張する人もいれば、肉体関係がなければ浮気ではないと解釈する人もいるようです。ちなみに、法律には「浮気」という記述も定義もありません。
不倫とは
不倫の定義は簡単です。要するに、既婚者が他の異性と肉体関係を持っていると不倫となります。この場合の「他の異性」は、既婚、未婚は関係ありませんが、既婚者同士であればW不倫となります。「不倫」もまた法律には記述も定義もありません。
不貞行為とは
法的に規定されているのは「不貞行為」だけです。その定義は、セックスまたは異性との射精が伴う行為ということです。ですから厳密にいうと「手コキ」や「フェラ抜き」も不貞行為になってしまうようで、実際にそういう判例もあるようです。
さて、「浮気」と「不倫」と「不貞行為」の定義が分かったところで、問題は肉体関係(射精行為を含む)があったことをどうやって証明するかですよね。
不貞行為の証拠集めに関わりそうな法律
旦那さんの浮気を疑い始めた奥さんは、旦那とその相手をとっちめるために証拠を集めようとするわけですが、その行動に関係する法律がいくつか存在します。そして、その法律が気になって臆病になってしまう奥さんも少なくありません。
夫のプライバシーを侵害する
旦那の浮気を暴く最も効率的な方法はスマホやパソコンの中を見ることです。努力はしてみたものの、証拠を何も手に入れられなかった奥さんが旦那さんに向かって、「何もやましいことがないならスマホを見せてよ!」と、イチかバチかの勝負に出るケースも少なからずあるくらい確率が高いです。
このように旦那さんの同意を得てスマホを見るなら法的に何の問題もないわけですが、実は無断でスマホを盗み見ると一応は法律に抵触することになります。
「内緒で旦那のスマホを見たいという衝動と葛藤について」という記事でも書いたのですが、それは民法709条の「プライバシーの侵害」が「不法行為」に該当するのです。
とはいえ、これは民法ですから警察がどうの逮捕がどうのという話ではありません。警察は民事不介入ですから、そんな話は当人同士で勝手にやってくれという問題でしかありません。
では、奥さんにスマホを勝手に盗み見られた旦那さんが奥さんに対してプライバシーの侵害で裁判を起こすかというと、そもそもの原因は旦那さんの浮気疑惑ですからね。もし既に浮気の証拠を奥さんが握ってしまっていたとしたら、旦那さんにとってはプライバシーの侵害どころの騒ぎではありません。
プライバシーの侵害で奥さんに訴訟なんて起こそうものなら、奥さんはさらに逆上して、いくら旦那さんに慰謝料を吹っかけてくるか分かったものではありません。
ですから、もし旦那さんが本当に浮気しているなら、いくらスマホを奥さんに無断で見られたからといって手も足も出ないわけです。せいぜい文句を言うくらいが関の山でしょう。
あとは奥さん自身の道徳観念しだいですよ。とはいえ、もし旦那さんに浮気疑惑があったとして、スマホを見ないでじっと我慢できる奥さんは現実にどれくらいいるでしょうね。
あなたはどうですか?わたしはもちろん我慢できませんでしたから、パスワードを何とか割り出して中を隅々まで見てやりました。
夫のPCやスマホのパスワードを割り出す
浮気している多くの旦那さん達は、自身のパソコンやスマホにガッチリとパスワードをかけて中を見られないようにしていることが多いようです。そのことが逆に奥さんが浮気を疑うキッカケにもなっているんですけどね。
前述したとおり、旦那さんの浮気を暴く最も効率的な方法はスマホやパソコンの中身を見ることですから、もしそこにパスワードが掛かっていたら何とかして割り出してやろうと思うのは妻として当然の感情です。
けれども、実はこれって刑法に触れるんですよね。刑法ですから、警察に訴えられたら刑事事件になる可能性はあります。その法律は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」というものですが、厳密には夫婦間、親子間でも犯罪は成立します。
とはいえ、スマホやPCのパスワードが奥さんによって暴かれ、そして不倫メールを見られて浮気がバレたような場合、仮に旦那さんが警察に被害を訴えたところで、果たして警察は奥さんの犯罪を立件して書類送検するでしょうか? または検察は奥さんを起訴するでしょうか?
この件についてはわたしの弁護士さんにも質問してみたのですが、ほとんど可能性はないとの意見でした。「夫婦間の問題ですから、お互いによく話し合ってください」…で終わりのようです。
それでも旦那さんが意地になって弁護士を雇い、弁護士を経由して警察に訴えたと仮定すれば、警察は仕方なく奥さんに事情聴取はするでしょうが、それも形式上だけの話で実際には書類送検なんてしないだろうし、そもそもそんな事件で弁護を引き受ける弁護士はいないと思いますよ…という意見でした。
これはあくまで法律のド素人である管理人の考えですから、それを承知のうえで参考にしていただければ幸いですが、旦那さんに浮気疑惑がある以上、奥さんとしてはパスワードを暴くことに遠慮なんて要らないですよ。
そんなことで遠慮なんてしていたら、世の中の浮気されたほとんどの奥さんは泣き寝入りです。
もし、結果として旦那さんの浮気疑惑が奥さんの勘違いだった場合、その時はその時で腹をくくるしかありません。全ては旦那さんを愛するがゆえの行動ですから、結末は旦那さんに委ねるしかありませんね。
旦那の浮気相手に関わりそうな法律
さて、ここからは浮気相手との問題です。相手の女性は、旦那さんとの不貞行為によって、こちらの夫婦関係や家庭を破壊した共同不法行為者の一人です。
悔しいですよね。憎いですよね。復讐したいですよね。
W不倫によって離婚を経験したわたしは、その気持ちが痛いほど分かります。
ところが合法的に解決しようと思ったら、日本では相手に慰謝料を請求して謝罪してもらう以外に方法はありません。「日本では」と書きましたが、実は多くの先進国では旦那さんに不貞行為があっても浮気相手に慰謝料の請求どころか謝罪の義務もないのが現実なんです。
こと不貞問題に関する法律については、先進国の中では日本が特殊らしいです。とはいえ、イスラム圏では石打ちの刑とか死刑などというとんでもない話も聞くので、それと比べるとはるかに軽いですけどね。
さて日本の話に戻ります。
旦那の浮気相手にビンタをくらわす!
わたしもそうしたように、浮気の事後処理については弁護士さんに任せてしまう奥さんも多いわけですが、その前に1度や2度は必ず浮気相手との面談は必要です。
なぜなら、浮気のキッカケや継続期間、肉体関係の回数などについて二人の証言に食い違いがないかを本人の証言によって確認しないと慰謝料の金額にも影響するし、何より自分の気が収まらないからです。
で、実際に面会してみて相手の態度によっては本当にぶん殴りたくなるわけですよ。
こっちはお金がないのに無理して探偵まで雇って証拠はバッチリ押さえているのに、それを知らない相手は自分に都合のいいようにトボケルわけです。確かに一緒に飲みには行ったけど、ラブホなんて行ってませんよ…とかね。
「こっちは全てお見通しなんだよボケ!」とか言って、マジで蹴飛ばしたかったですよ。(笑)
でも、そこで手を出したり足を出した場合、ひょっとすると相手はケガの診断書を取って慰謝料減額の交渉ネタに使ってくる可能性があります。
なぜなら、相手を殴ったり蹴ったりしてケガをさせ、その診断書をタテに訴えられた場合、刑法第204条(傷害)によってあなたが罰せられる可能性があるからです。とはいえ、相手は自分の不貞行為によって慰謝料は請求されるわけですから、警察への訴えを取り下げるからその代わり慰謝料を減額してくれと言ってくるかもしれません。
だから人によっては奥さんに殴らせようと、わざと汚い言葉でなじって挑発してくる可能性すらあります。
ですから、確かに相手に対して復讐したい気持ちは分かりますが、もし少しでも多く慰謝料を取ろうと思うなら、決して手を出すなどの暴力行為は慎まなくてはなりません。別にお金なんかどうでもよくて、とにかく自分のウサを晴らしたいだけなら思った通りに何でもやってみるのもいいかもしれません。
その後の責任は自分できっちり取ればいいだけの話です。
浮気相手の勤め先に浮気をバラす
浮気された奥さんとしては、浮気相手への復讐の一環として、相手の勤め先に不貞の事実をバラすことによって社会的な立場を失墜させてやりたいという気持ちがあります。
ただ、この場合にはいくつかの条件があって、それによって犯罪になるかならないかの微妙なラインがあるようです。
1.法律上、特に問題にならないようなケース
旦那さんの浮気相手が旦那さんの同僚や派遣社員だった場合、これは社内問題でもありますから、旦那さんの上司や会社のコンプライアンス担当者に相談して、旦那さんと浮気相手が社内で接触出来ないように配置転換してもらうとか、派遣を打ち切りにしてもらうような方向でお願いする程度の行動は問題ないようです。
処分についての決定はあくまで会社側にあるので、奥さんとしてはあくまで「相談」ということに止まると思います。ただし、旦那さんは勤め先に社内不倫がバレるわけですから、その立場は非常にまずい状況になりますね。
ヘタをすると降格になってしまったり、僻地へ左遷させられてしまうかもしれません。なので、もし奥さんが離婚しないつもりであればこの方法は得策ではありませんね。
2.法律上、問題になりそうなケース
旦那さんと浮気相手の職場が違う場合、もし奥さんが腹いせで浮気相手の職場に不貞行為をバラしたとすれば、もしかするとプライバシーの侵害(民法第709条)、あるいは名誉毀損(民法第723条)で相手から訴えられるかもしれません。
職場内の不倫ではありませんから、彼女の不倫は浮気相手の勤め先にとって全く関係ないからです。ですから、もし奥さんが相手の会社に突撃してしまった場合、「名誉毀損」を慰謝料減額のネタとして使ってくると思います。
もしその騒動が影響して勤め先が彼女の派遣契約を打ち切ったりして不利益を被った場合、ヘタをすると彼女から損害賠償請求の訴えを起こされる可能性も出てきます。なので感情に任せた不用意な突撃は慎んだほうがいいですよ。
浮気相手の親、夫にバラす
これは特に法律に違反するような行動ではありませんね。仮に、「旦那さんに内緒にしてやるから1,000万円寄こせ」…みたいな法外な金銭を要求するなどの行為でもあれば別ですが。もし浮気相手が独身であれば、例え成人していようが相手の親に対して苦情を言うくらいの権利は奥さんにはあるでしょう。また、相手に夫がいるのであれば、夫に不貞の事実を告げるのはむしろ親切でさえあります。なにしろ相手の旦那さんもあなたと同じ被害者なのですから。
慰謝料を請求する
配偶者が不貞行為を行なった場合の慰謝料請求は、民法の次の条文が根拠となっています。
民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。民法710条(財産以外の損害賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
不貞行為は配偶者とその浮気相手の共同不法行為であることから、慰謝料は当事者二人に対して請求することができるのですが、その配分については請求する側が決めることができるようです。
例えば、慰謝料の総額を500万円とした場合、夫に200万円、浮気相手に300万円を請求してもいいですし、夫には請求なしで、浮気相手に500万円を請求しても構いません。
また、慰謝料というのは裁判にすればある程度の相場で判決が出てしまいますが、示談によって双方が納得すれば金額には上限はありません。ですから、浮気相手がどうしても裁判を避けたい立場の人であれば、仮に1,000万円を要求しても承諾する可能性はいくらでもあります。
不倫と法律のまとめ
さて、不倫された奥さんに関係しそうな法律はこんなところでしょうか。
ちなみに、子供がいて旦那さんと離婚する場合はさらに別な法律が絡んでくるので、それは次の記事でご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
旦那の不倫問題を法的に解決すると、奥さんの心にはとても大きなストレスが残るのは間違いありません。確かに慰謝料としていくらかのお金は手に入るかもしれませんが、そんなものよりも以前と変わらない平穏な家庭生活を返してくれって話なわけです。
結果として、誰も幸せにならないのが不倫という行為です。結婚している人は、本当にやめてほしいものですね。